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#015

「人文知」を経営に生かす
人文知研究所

OKANOとCOTENの
協業が生み出すカイシャの新たな姿

 歴史上の出来事や偉人について深掘りしながらポッドキャストを中心に配信するCOTEN RADIO。歴史というマニアックな題材ながら、知的好奇心をくすぐるテーマや「ながら聴き」で楽しめる気軽さなどがビジネスパーソンを中心に支持され、週間リスナー数は約27万人に及ぶ。

 そんなCOTENが、「人文知と社会の架け橋になる」ことを掲げて企業とのタッグを組み始めた。売り上げや利益の最大化を一般的な目的として活動する企業において、「人文知」が果たす意味とは何か。2024年から始まったCOTENとOKANOによる活動を基にその真意を紐解く。

1.COTENが見せる
「表の顔」と「本当の姿」

 織田信長、ペリーといった偉人や民主主義、社会福祉といったテーマに至るまで、幅広いスコープで配信しているCOTEN RADIO。1テーマで10回以上のシリーズとなることも多く、しかも各回の配信時間は長い。それでもリスナーを惹きつけるのは、エビデンスに基づく考察の奥深さや出演者たちの軽妙な掛け合いの面白さによるものなのかもしれない。

 ただ、COTENにとって国内外の歴史を紐解いて配信することは手段の1つでしかない。人類の長い営みで築かれた数多くの事例の提供を通じ、変化の激しい時代に人々が主体的な価値判断を下せる羅針盤となる情報を届けることに本質がある。

 実際、事業を通じて注力しているのは「世界史データベース」の構築だ。文献を基に歴史上の出来事や偉人の生涯などを網羅的に収録し、誰もが手軽にアクセスできるようにすることで、変化が激しい時代に主体的な判断を下す道しるべの場を設けることに主眼を置く。

 COTENの事業活動においてフォーカスする対象は個人に限らない。企業が経営面で主体的な意思決定を進める上でも、歴史、哲学、心理学などの「人文知」を基盤にできるかが大いに影響するとしている。そんな考えに共鳴し、「法人CREW」と呼ばれる法人会員も年を追うごとに増えてきた。

2.OKANOと
「人文知研究所」との接点

 そもそも、企業において一般的に売り上げや利益の最大化や効率性といった要素が求められるのに対し、人文知の領域はマッチしないようにも映る。ただ、ビジネスのゲームルールが驚くほど早く変わる時代に、自分や社会に対する解像度を上げ、複数の視点で物事を見つめられるようにするためにも、COTENの代表である深井龍之介氏は「ビジネスパーソンこそ、人文知を学んだ方がいい」と説く。

 そんなCOTENが、企業とさらに踏み込んだ関わりを持つ展開として推し進めているのが「人文知研究所」だ。企業内のメンバーが実際にリサーチを進める専門機関は、「ポスト資本主義」「戦争と平和」「女性活躍推進」などの社会課題を活動のテーマに据える。OKANOは、社内で選抜したメンバーを中心に2024年から人文知研究所の活動を始めた。

 OKANOにとって、COTENとのタッグによる活動に乗り出すことはどんな意味を持つのか。人文知研究所は他に大手インターネット広告会社でも展開しているが、地方に拠点を置くBtoBのモノづくり企業が参画することは異様でもある。

 一方で周囲が手を伸ばさない領域に飛び込む「ファーストペンギン」な取り組みにこそ、OKANOが約1世紀を通じて培ってきたメンタリティが内包されている。発電用バルブの領域で周囲に先んじて「業界初」「世界初」の技術を数々送り出した歴史からすると、次の100年を見据えて先鞭をつけるCOTENとのタッグは自然な流れだったのかもしれない。

3.選抜メンバーによる
リサーチ活動の展開

 社内で「インテリジェンス機関(JI)」と呼ばれる人文知研究所の取り組み。性別、年齢、職種がさまざまな選抜メンバーの中には、大学時代に歴史学どころか人文科学、社会科学系の専攻ではなかった者もいる。業務の合間を縫う形で、数多くの文献と向き合いながら慣れないリサーチ活動は動き出すことになった。

 2024年夏、JIメンバーにはCOTENサイドから「ESG」をテーマとしたリサーチのお題が与えられた。単に文献を調べるだけでなく、OKANOの経営にどんな形で反映できるかといった「洞察(インサイト)」まで踏み込んで提言することが求められる難題でもあった。

 JIメンバーは月1回の頻度で開かれる経営陣への報告に向け、オンラインで頻繁に打ち合わせを重ねた。ESGの取り組みが積極的な欧州のトレンドはどうなのか。世界的な潮流がOKANOの経営において今後どんな影響を及ぼすのか。両者の協業の在り方を探る意味も踏まえた手始めのリサーチは約半年に及んだ。

4.リサーチから経営方針の
深掘りによるアクション

 ESGに関するリサーチを通じて両者が流れをつかんだ後、協業の在り方は経営そのものに関する検討へと踏み込んでいった。背景には、「次の100年」を見据えた際に挙がったOKANOを取り巻く環境に対する危機感がある。

 OKANOにとって、これまでの100年は社名にあるバルブの存在によって成り立ってきた。ただ、変化が激しい時代に次の100年も同じように歩める保証はない。企業に求められる役割自体が変化していく今後において、売り上げや利益を求めるだけの在り方も難しくなっている。

 そうした課題を基に2025年3月には両者のメンバーが集まって合宿を開いた。議論を通じ、事業を通じて生み出した余剰を基に社会課題の解決を図る「社会善」な活動への注力が今後のOKANOにおける重要なテーマとして定められることになる。

 合宿では「社会善」な活動を実行に移すために必要な事業規模やステークホルダーの設定などにも話が及んだ。現在、足元では「ビジネスでのスキルや経験値」「地域や社会が抱える課題に対する関心」の双方を兼ね備えた人材の掘り起こしやタッチポイントづくりを水面下で講じている段階だ。

 「人文知と社会の架け橋になること」を掲げて活動するCOTEN。一方でOKANOは一企業としての役割や使命を超え、地域・社会に視座を置いたアクションに軸足を移している。両者が結んだ架け橋は、企業の在り方としてどんな「世界初」「業界初」の姿を生み出すのか。50年後、100年後を見据えた取り組みは端緒に就いたばかりといえそうだ。

About Project

 歴史系ネットラジオとして約27万人もの週間リスナーを抱えるCOTENが、企業とタッグを組んで推し進めている取り組みが「人文知研究所」だ。企業内のメンバーが社会課題と向き合いながらリサーチを進める専門機関は、歴史、哲学、心理学などの「人文知」から学び、企業が経営面で主体的な意思決定を下せる素地を作ることを主眼に置く。

 OKANOは2024年にCOTENとの協業に乗り出し、社内に人文知研究所を設けた。社内で選抜されたメンバーが、文献によるリサーチ結果から自社の経営にどんな形で反映できるかといった「洞察(インサイト)」を実施し、経営層に対して提言する活動を展開している。